院長エッセイ集 気ままに、あるがままに 本文へジャンプ


イタリアンレストラン 「ニコ・スペーツェ」

 
 
 那覇の西消防署通りを西へ向かうと、潮の香りが僅かに感じられるあたり、本通りから少し右に入ったところにニコ・スペーツェはある。落ち着いた大人の雰囲気のイタリアンレストラン。Smooth Jazzが心地よい午後のひとときを演出する。案外広い店内だが、兄弟で仲良くやっているせいか、アットホームでこぢんまりとした印象。兄はシェフで、東京麻布十番で修行を積み、ルネッサンスリゾートを経て、腕を振るう。弟はバリスタ兼ウェイター。ワインの造詣も深そうなので、ソムリエかも。ランチメニューは千二百円。パスタ三品からお好みをチョイス。私はキャベツとアンチョビーのペペロンチーノをオーダー。焼きたてのパンが運ばれてくる。美味。「手作りパンはやっぱり美味しい。」私が呟くと、細君はいつもの様に視線をそらす。「そういえば我が家のパン焼き器は何処にあるのだろう?」という私の次のセリフを予想し、スルーしようと待ち構えているのだ。夫婦のたわいもない駆け引きを楽しむ間もなくカボチャと冬瓜のスープが運ばれてくる。濃厚なカボチャに、冬瓜の上品なうま味が程よくブレンドされ、口当たりと喉ごしが絹のようになめらかである。次に前菜の三品(写真1)。右端に、とうもろこしの粉をねったフォレンタを一度グリルして、その上にトリッパ(牛の胃袋)のトマト煮を乗せた一品。真ん中には大根を赤ワインの酢で漬けたマリネをトッピングしたグリーンサラダ。左端には紅芋と里芋のハニーマスタードサラダ。他の店からすれば、これは反則である。ランチにこんな手の込んだ前菜を出してはいけない。手間とコストが割に合わないだろうと客としても不安になる。でも出てしまったものは、素直に味わうに若くは無し。さてメインのパスタは(写真2)キャベツのほのかな甘みにアンチョビーの酸っぱさが、オリーブオイルを仲立ちにして、アルデンテよりもちょっと堅めのスパゲッティーにねっとりと絡まる。くどい味にならないのはフェデリーニあたりの細い麺を使っているためだろう。さてここまでで、満足度は百二十%である。それから後にもお楽しみが待っている。食後のコーヒーだ。私はカプチーノを頼んだ。ここのバリスタは素敵なラテアートを描く。この日はスノーマンだ(写真3)。味もまた素晴らしい。コーヒーに深みはあるが雑味はない。焙煎時の渋皮の処理が巧みなのだろう。私たちは食後のデザートを追加し(+二百五十円)、満足度百五十%で食事を終えた。これはちょっとやり過ぎだ。周りのお店はいい迷惑だ。でもその過剰なサービスに魅力を感じる御仁も多いはず。ぜひ一度ご堪能あれ。




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